閑静な住宅街が広がる大津市仰木の里で、2003年に地域住民の交流の場として始まったふれあいサロン「ひまわりの種」。2023年に活動20年目を迎え、「令和４年度健康寿命延伸プロジェクト知事表彰事業」では、地域部門介護予防分野で表彰されました。

20年の間、形を変えながら、いまでは地域の人にとってなくてはならない活動となった「ひまわりの種」を立ち上げ、継続してきた、代表の小倉久美子さんにお話を伺いました。

大好きな街のために

私たちが活動をしている仰木の里は、比叡山の麓、丘陵地に開発された大規模な住宅地です。住民は1万人を超えていますが、分譲が始まって40年ほどがたち、単身者や高齢者のみの世帯が増えてきました。実際に、大津市全体の65歳以上の割合が27.5％に対し、仰木の里1丁目は45％という数値も出ていて、高齢化に直面していると言っても過言ではありません。

そんな街で私が「ひまわりの種」の活動を続けている大きな理由は「この街が好き」というとてもシンプルな気持ち。ご参加くださる皆さんのことが大好きで、そんな皆さんと一緒に元気に歳を重ねたいとの思いで活動を続けています。少子高齢化が進む今だからこそ、一人ひとり元気に歳を重ねることが地域活性化の第一歩だと思っています。

義母の介護を経験して、福祉に興味を持ちました。義母はよく散歩に出かけ、公園で近所の人とお喋りしていたんです。炎天下でも、寒い日でも、長時間外で喋っている姿を見ていて「地域のたまり場」があれば、もっとみんなが交流できるんじゃないかと思い、「おしゃべりサロン」を始めたのがきっかけです。その後、「作って食べよう」「だがしや楽校」「野菜作り」と内容を変え、９年前からは健康づくりをメインにした活動を続けています。そのおかげで幅広い世代の人たちと出会い、つながりを持つことができました。活動内容は変わっても、地域住民の集いの場でありたいとの思いは変わっていません。

みんなでやれば継続できる

現在の活動は、仰木の里にある「里自治会館」で毎週金曜日の午前中に行っていて、私を含めたスタッフ6名体制で運営しています。毎回20人程度の参加者があり、DVDを見ながら筋力トレーニングをしたり、口腔体操をしたり、ストレッチや脳トレなどもしています。

健康づくりにシフトしたのは、私が圧迫骨折をしたことがきっかけでした。日頃から運動をするようにとお医者さんから言われたのですが、自分ひとりではなかなか続かなくて。きっと私と同じように“運動しないといけないことはわかっていても、一人では続けられない人”もいるのでは…そこで、みんなで運動することで習慣化してほしいと思い、週１回実施しています。

参加者のみなさんは週に一度は顔を合わせるので、みんな顔なじみになってきて、ここ以外でも一緒にウォーキングをしたり、ランチに行ったりと新しい交流の輪が広がっているようです。「デイサービスに行くよりも、サロンに行きたい」と家族に送迎してもらって参加してくれる人もいます。お喋りする時間も大切にしていて、体操の後に茶話会を開いたりもします。みなさんの笑顔が私の元気とパワーの源になっています。

また、毎月第4水曜日には不定期でお楽しみイベントを開催しています。令和５年度は20周年を記念して、オカリナ演奏会や人形浄瑠璃、笑いヨガの他、手話やプレーンハープ演奏会＆体験など、幅広い催しをしたところ、たくさんの人が来てくれました。お楽しみイベントでは、いつもとは違うワクワクを感じてほしい、楽しんでほしいと思って企画、開催しています。イベントをきっかけに地域の方が新たに来てくださったり、知らなかったこと・新しいことに興味を持つきっかけになったりしているので、今後も興味関心が広がるような企画を考えていきたいです。

みんなで元気に歳を重ねていきたい

新興住宅地って、ご近所付き合いが希薄な部分があるんです。世代は同じくらいの方が多いのですが、子どもの頃から一緒に育ったわけでもないし、会社勤めの人も多いので、つながるきっかけがなかったりして、お隣さんとでさえいつ会ったか思い出せないようなことも。

そんななかで、「最近〇〇さん見かけないね」とご近所さんを気にかけたり、顔を合わせたときに「元気？」「困ったことない？」と日頃から気軽に声を掛け合える関係づくりができたらいいなと思っています。住み慣れた街で笑顔で暮らしていきたい。そのためにも、今後も地域の出会いの場、つながりの場、交流の場として活動を続けていきたいと思います。