しが健康豆知識TRIVIA

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vol51

ありのままの自分でいられる場所を目指して

2025/03/05

 

 

甲賀市内の住宅街抜けて小高い丘にアートな空間が突如現れます。知的や精神、身体に障害をもつ利用者さんが在籍される「やまなみ工房」。93名の障害の程度は様々です。それぞれが自分のペースで、自分の作りたい作品に携わっています。最近では個性あふれる作品に注目が集まり、滋賀県で開催される国スポ・障スポのメダルデザインにも採用されました。どのようにして作品は生まれるのか作業中のアーティストの皆さんに会いに行きました。

常識にとらわれない自由な空間

作品へ取り組む姿勢は人それぞれ。寝転びながら描く人、スタッフと楽しくお話しながら作る人、音楽を聞きながら描く人…。

作品を作るのに使用するものも人それぞれ。色鉛筆、ボールペン、墨汁、粘土、糸と針、ストロー、ボタン…。

作品ができあがるスピードも人それぞれ。2分で1体のお地蔵さんを作る」人もいれば、1年かけて1枚の絵を完成させる人もいる。布をつまんで縫い3年かけてひとつの作品を作り上げる人もいる。

そこには作品を作る目的も、うまく作らなければという思いもありません。ただ縦に縫うのが好き、ただ人の顔をたくさん描くのが落ち着く、ただそれだけ。

このように、人それぞれ好きなものを作る。でも、別に作らなくてもよい。その自由な空間が唯一無二の独創的な作品を生み出しています。

 

一人の利用者さんのおかげで今の自由で穏やかな工房が誕生

どのようにしてこの自由な空間は生まれたのでしょうか?「やまなみ工房」施設長の山下完和さんにお話を伺いました。

1986年に18歳以上の障害者が通う施設としてやまなみ共同作業所が開所されました。最初は下請けの内職や社会に適応するように訓練を行っていました。

そんななか作業中に一人の自閉症の方が落ちていた紙に落書きをし始め、今まで見たことないイキイキとした表情で絵を描かれる姿を見ました。そこで毎日私達が頑張れと言って作らせていることが本当に彼らのしたいことなのか?果たしてこれが正しいのか?と自問自答しました。

彼らが1日不安定にならずに好きなこと得意なことができる空間を作りたいと思いました。例えばカフェが好きな人がいても働く先がなかったらカフェを作ったり、踊りたい人がいたら踊れる場所を作ったり。そのようなことを意識し実行していくうちに、穏やかな日常を過ごせる今の工房へと生まれ変わっていきました。

社会に働きかけていくことの大切さ

社会とのつながりを持つために、最初は作品をお寺の朝市や駅に並べたり、ギャラリーや銀行・郵便局に展示させてもらえないか交渉したりしてきました。

活動が広がりを見せる中で、市の全ての小学校で展覧会をさせていただきました。障害者だから凄いということでなく、一人の人間やアーティストとして彼ら自身を知ってほしいという想いが強くありました。差別や偏見は、障害者と出会うきっかけが少なく、どう接すればよいか分からないから生まれる部分も大きいと感じています。私たちから社会とつながっていくことで、固定化された障害者像が少しでもなくなっていけばいいなと思っています。

アーティストの家族も幸せに

最近ではありがたいことに様々な企業様などとの繋がりが広がってきました。アーティストの方々は作品が売れたり、有名な美術館に飾られたから嬉しいというより、家族や周りの人がそれを喜んでいることが嬉しいようです。また、家族の皆さんにとっても、アーティストの方々が楽しそうに創作活動されていることが喜びとなっているようです。

 

実家のような場所であり続けたい

今後の特別な目標はといったものはありません。ただ、彼らがどのようなことをすれば喜ぶか、びっくりするかをこれからも考え続けていきたいです。

アーティスト一人一人が心地よくいられる環境づくりを大切に、したいときにしたいことをし、終わりたいときに終わることができること。〇〇でなければならない、と押し付けることはなく、色々な選択肢の中で選べる自由を大切にしていきたいと思います。

やまなみ工房がアーティストやスタッフにとって実家のように居心地よく飾らなくて良い場所、ありのままの自分でいられる場所、これからもここに来たいと思われるような場所であり続けたいですね。

やまなみ工房

住所 滋賀県甲賀市甲南町葛木872
TEL 0748-86-0334
FAX 0748-86-8911
URL http://a-yamanami.jp/
やまなみ工房見学希望の方はHPよりお申込みください
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